ながさき原爆記録全集 概要

「ながさき原爆記録全集」とは・・・・

(文責:ディレクター吉村あきお 2021.12記)


ここで作品を観ることが出来ます


「ながさき原爆記録全集」
第1~14回総集編
「海兵隊フィルム」編 
28分カラー・ステレオ  
⚫2016年 第53回 ギャラクシー賞 報道活動部門 奨励 



「ながさき原爆記録全集」
第16~29回総集編
「米国戦略爆撃調査団フィルム」編
58分カラー・ステレオ  
⚫2017年 第54回 ギャラクシー賞 報道活動部門 優秀賞
(NHKをはじめ全国の民放各社をおさえての受賞でした!ケーブルテレビの快挙!)
⚫2017年第43回日本ケーブルテレビ大賞 番組アワードコンテンツフェスティバル   グランプリ



「ながさき原爆記録全集」
第46~56回総集編
映画「広島長崎における原子爆弾の影響」編 ※前半の総集編
38分カラー・ステレオ  
⚫2020年 第57回 ギャラクシー賞 テレビ部門 奨励



「ながさき原爆記録全集」
第46~63回総集編
映画「広島長崎における原子爆弾の影響」
検証編(全体の総集編)
55分30秒カラー・ステレオ  
⚫2021年 第41回 「地方の時代」映像祭 ケーブルテレビ部門 優秀 




「ながさき原爆記録全集」とは
●長崎のケーブルテレビ 長崎ケーブルメディア11chで被爆70年企画として2015年11月から、定期的に放送中。
第63回までに日本の3大原爆フィルム(「海兵隊フィルム」/「戦略爆撃調査団フィルム」/映画「広島長崎における原子爆弾の影響」)の全カットを解説付きで紹介
●2021年3月からは、番組内新企画「山端庸介原爆全写真」して、山端庸介が撮影した被爆翌日の写真117枚と以降の原爆全写真全てを正確な撮影場所とともに解説紹介。さらに山端に同行した画家と詩人、写真の証言者の特集なども加え現在放送中。
30分番組。
2021年12月現在の最新作は第71回 
放送継続中!




●この中には原爆の写真のミュージックビデオ(!)
があります。
「原爆散歩 時を紡ぐ」

●さらに4K原爆バラエティ番組
「激撮!カメラ女子!イコウ!ナガサキ(!!)も放送。
全体未聞!楽しい原爆番組です。


「ながさき原爆記録全集」は
●2017年4月~地上波でも放送していました。
●一時期、長野県、大阪府、熊本県など一部のケーブルテレビ局でも放送していました。現在は長崎のみです。

●このブログの最後に全放送の内容リストがあります。







●基礎知識として…
長崎原爆フィルムは
カラーフィルムとしては2種類、
被爆直後に撮影された白黒の記録映画が一本存在します。

まず
「海兵隊フィルム」
(撮影1945年9月23日~11月10日)
約5時間・全1,121カット
被爆後もっとも早く長崎の爆心地をカラーで撮影したフィルム。その名の通り長崎に上陸した米海兵隊が撮影。被爆地以外、長崎市中心部や郊外の風景も撮影している。
つぎに
「米国戦略爆撃調査団フィルム」
(撮影1945年11月5日~1946年2月4月)
長崎部分のみ約6時間半・全1,364カット
米大統領令でアメリカ側が日本全国の爆撃の影響を撮影したもの。長崎から撮影を開始している。被爆地は非常に丹念に撮影している。撮影スタッフに映画関係者が多数いるためか、明らかに「演出の画(ヤラセ?)」が散見され、当時の生活や風俗を正確に表しているかは疑問が残る。

この2つが今のところカラーで被爆後の長崎を確認できる映像の全てです。
(「広島長崎における原子爆弾の影響」は白黒フィルム)
もちろん米国立公文書館などがこれ以外の映像を保管している可能性はあるのですが、現在のところ公表されている長崎原爆カラーフィルムはこれだけです。

次は日本人が撮影した原爆被災記録映画
映画「広島・長崎における原子爆弾の影響」
(撮影1945年9月以降)
これは日本人が企画撮影編集した日本人の手による唯一の原爆被災記録映画です。
1946年5月に完成しましたがすべての映像は米側に没収され返還されたのは1967年。それまでは「幻のフィルム」と呼ばれていました。救護所になった新興善国民学校などアメリカ人が撮影していない貴重なシーンを数多く見ることができます。
●またこの映画には「未使用フィルム」があります。映画は完成直後にすべて没収されたので、日本に原爆映像は残っていないはずでした。実は没収直前にこのプロデューサーがアメリカ側の目を盗み編集途中の素材を隠し、命をかけて原爆映像を守り通しました。
それが「未使用フィルム」と呼ばれるものです。
その映像は撮影35ミリフィルムから直接コピーしたと思われる高画質映像で、後に返還された映画よりもはるかに高精細なものでした。この映像は2016年に4K化されました。この番組はこのマスターデータをもとに制作しています。
なのでこの番組は第46回から55回までは4K番組なのです。
4K大画面で見るとまた新しい発見があります。

⚫専門家の間では映画「広島・長崎における原子爆弾の影響」「海兵隊フィルム」「戦略爆撃調査団フィルム」日本3大原爆フィルム」と呼んでいます。
この3本の全てのカットが見れるのは全国でこの番組だけです。
えっへんw(自慢)

●この3種類の原爆フィルム(計14時間)はNHKをはじめとする原爆に関するテレビドキュメンタリーや特集などで部分的に数秒~数十秒使用されることはあっても、これを「全て」公開しようとする放送局、メディアはありません。ネット上でも数分しかアップされていません。(しかもネット上など、その解説にかなり間違いが多い。)






第1回~第15回で「海兵隊フィルム」全5時間の1,121全カットを解説付きで紹介。
第16回~34回で「米国戦略爆撃調査団フィルム」全6時間半1,364全カットを解説付きで紹介。
第46~63回で映画「広島・長崎における原子爆弾の影響」とその「未使用フィルム」合計2時間半全788カットを解説放送しました。
この番組を観れば基本的な長崎被爆の状況は分かります。


そして2021年4月以降は新章に突入…
第68回以降は「山端庸介 原爆全写真」と題し
世界で唯一、被爆翌日の被爆地を撮影した山端庸介さんの原爆写真117枚を撮影順に紹介
そして合計200枚以上の原爆写真を正確な撮影場所を特定しながら一枚一枚解説放送しています。現在進行中です。

2024年1月で16回目。まだまだ「ながさき原爆記録全集」は続きます。





●この「ながさき原爆記録全集」はケーブルテレビでしかできないことを数多く実行しています。
●ここで地上波放送の基本的なことを・・・
地上波では番組の放送は1回です。どんなに頑張っても再放送をして合計、僅か2回。まあ、賞をとったらあと1回できるかどうか・・・。地上波は基本的に、「番組は使い捨て」なのです。あとはアーカイブに入って懐かしのなんたら・・を待つだけ・・・。最近はネットに乗せて見せる手法もありますが(それは、なかなかいい手だけど)、それも、番組が分かっている狙った人しか見ることはできないのです。

●さて・・・
その点この「ながさき原爆記録全集」は長崎ケーブルメディア(エリアは長崎市内)で現在、週に3回の再放送と最新版1回の、週に4回固定位置の時間で定期的に放送されています。放送は1回きりではないのです。最新作以外は1から順に再放送され続けています。
毎年、年末には紅白の真裏で0時まで6時間集中放送したり、もう何回やるんだってぐらい放送していますw。
※ちなみに最新作は毎週日曜の夜8時から放送中。つまりNHK大河の真裏ですww

●さらに、この番組の大きな特徴ですが、
その再放送が新しい情報が入る度に過去放送の内容を随時修正、更新しているというところにあります。
↓下の場面は第22回で放送した弓井先生の映像を第18回の空撮にインサートしています。

視聴者からの情報で新たに判明した地名や地域は放送後でもどんどん新たなものに差し替えています。
松田斉さんの解説があとで間違っていることが、視聴者からの情報で判明すると、もちろん即修正。
↓下の場面は第7回で松田斉さんは場所が分からないとコメントしていますがテロップは「第27回の検証より」ということで視聴者情報で判明した地名を入れています。

昨年11月に城山小学校や一本柱鳥居など記念物から国指定史跡にランクアップしています。このように長期間放送することで、変更になったテロップも差し替えています。
↓第一回の場面ですが(現・国指定史跡)のテロップを追加しています。

さらに、放送後に新たな写真や資料が見つかるとそれらを加えて再編集。初回放送より2回目以降の再放送の方が充実した内容になってたりします。
↓初回放送後見つかった写真(救援列車)で再編集した第二十九回。初回放送の2週間後に更新しました。

●このように放送後に過去放送をどんどん修正するため、下の場面のように、第11回の放送なのに「第26回より」という、現在よりも先で放送する内容から情報を引用することが普通になっています。これは、この番組ならではです。

●このように、一度作ったものを、ただ再放送しているのではなく、新たなものにどんどん作り変えて「ながさき原爆記録全集」全体を完璧なものに仕上げているのです。
こんなことは、地上波やBSや、オンデマンドではできないのではないでしょうか。
完成したパッケージを後から複数回イジるのはこの業界ではありえないし、そもそも複数回放送できないですから。
ちなみに第1回はもう8回以上修正をしています。
しかしケーブル局でも、こんなことをしているのは私ぐらいですがww。
現在第1回から順に撮影地点の地図を入れ、さらに分かりやすくした大幅な超改訂版を再編集中です。(2021年12月時点で、第9回までのほぼ全ての説明に地図を追加編集して入れています。15回まで修正は続きます) 順次、再放送分から変わります。冒頭のメインタイトルのあとに、隅っこに小さく「超改訂版」と出るのが目印です。



●もちろん何回観ても飽きないような演出・編集も必要です。私が言うのもなんですが、この番組は異常に手を入れています。視聴者に分かりやすい画面にするため、たった20秒作るのに6時間以上かかって番組30分が1か月かけても完成しなかったことさえあります(第18回)。人知れず見どころ満載とだけ言っておきましょうww。



戦略爆撃調査団編の主な見どころ
◆第17回・第21回 フィルムに映る本人の被爆証言
画は谷口稜曄(すみてる)さん

◆第22回 フィルムの撮影現場を見た証言と不明地点判明

◆第25回 フィルムに父親を発見

◆第26回 父親が造った船を発見・不明地点判明

◆第27回 被爆3世による内容の再検証と修正

◆第28回 この番組がきっかけで70年ぶりの再会を果たす

◆第29回 番組を観て原爆体験を話す決意をした被爆者

第16回以降はできるだけ視聴者からの反響を組み込み、被爆の実態を立体的に構成しています。




お世話になっている方々

「海兵隊フィルム」…「平和博物館を創る会」の羽仁進代表理事。約20年前、会が入手した「海兵隊フイルム」5時間全てを放送するという、(私が発案した突飛なw)企画内容に賛同、快諾をしていただきました。これが全ての始まりでした
●「米戦略爆撃調査団フィルム」…「長崎平和文化研究所」の長崎総合科学大学名誉教授 大矢正人先生。米公文書館から直接入手した映像を大矢先生の研究協力という形で放送できるように尽力していただきました。ハイビジョンでプリントされた高画質映像は圧巻です。

さらに第65回の「原子雲編」では
原子雲映像の解説も担当。誰もが知っているけど誰も知らない映像です。
●番組制作に関しては「長崎ケーブルメディア」の大野陽一郎さん。ケーブルテレビという限られた(と思われがちな)メディアの中でこの番組制作にGOサインを出していただきました。ここまで自由に製作できたのも大野さんのおかげです。感謝しています。
●もちろんですが、解説のピースバトン・ナガサキ松田斉さん。長崎平和推進協会写真資料調査部会会長。松田さんの信じられない程詳しい解説がなければこの番組の形はありませんでした。

●他にもたくさんの方のおかげで現在も放送され続けています。

●この番組を作ったディレクターは吉村あきお。
元KBC九州朝日放送のディレクターで在籍29年間のうちトータル20年くらいはほぼ「ドォーモ」(若者向け深夜情報バラエティ月~木週帯1H番組)を担当。(1999年頃からはチーフディレクター、2006年はプロデューサー)。
「コンバット満の見えない生活」で2006年ギャラクシー賞テレビ部門奨励賞受賞。KBC社賞授賞。同年民間放送連盟賞は1票差で九州地区2位(泣)でしたw。
2007のサワダデス(福岡ローカルの朝ワイド番組)のプロデューサーw。
なお、2012年から母親の介護などで長崎に戻り、長崎ケーブルメディアあたりで地味に暮らしていました。
ケーブルテレビにいながらギャラクシー賞受賞できてそーとー嬉しいです!
(自慢w)

2017年6月1日ギャラクシー賞贈賞式 中央が受賞で浮かれる吉村あきおw
●ちなみに「ドォーモ」内で1996年4月から毎月1回放送していたコーナー「長崎・昭和20年・原爆フィルム」で毎月一回約23分で「海兵隊フィルム」全5時間は紹介しましたが、2年で打ち切りになりました(福岡の民放バラエティ番組で毎月原爆企画を2年も続けたこと自体はスゴイことですが)。この悔しい気持ちが長崎のケーブルテレビでの「ながさき原爆記録全集」の原動力になっているのは間違いありません。




※なおこの番組の著作は「長崎ケーブルメディア」にあります。番販や番組の放送、いろいろな会場での使用や公開などに関しては「長崎ケーブルメディア」の放送部にお尋ねください。決して悪いようにはいたしません
学校教材として使用するのは全く問題ありません
(無料で自由にお使いください)
できれば一声かけていただけると幸いです。

●先日長崎県立大学のメディア関係の学生さんに1コマだけですが、「ながさき原爆記録全集」の一部上映と裏話などのお話をしてきました。久しぶりの壇上に緊張ww。おおよそ以下ツイッターでつぶやいいているようなことを偉そうにww話しました。作品の上映では寝ている学生さんも約2名いましたが、眠たくならないような演出を(常に)しないといけないと反省しました。ほんと勉強になります。

緊張の吉村あきおww

 

●時々ツイッターで制作裏話をつぶやいているのでその一部を再録します


実は今回ギャラクシー賞受賞「ながさき原爆記録全集」シリーズは秋葉原で買った3万5000円の中古ノートPC(今ではもっと安いよw)と6万円位のEDIUS編集ソフト一本だけで作っています。他のソフトは使っていません。今やテレビ番組は学生でも簡単に作れる程度の環境で出来ちゃうんです
これですww(↓シールひとつで気分だけ高性能w)
この原爆シリーズはこの第2世代(ふるっw)corei5の中古ノートPCで作っていますが、実は、はじめの第10回くらいまではもっと古い性能のノートで作っていました。お金ないし。でもテレビ番組はちゃんと作れちゃいます。いい時代です

そもそも2006年までは1千万円以上する編集機や機材がないとテレビ番組を作ることはできませんでした。それが地デジ化に伴い放送局とソニーベーカムの癒着(笑)が崩壊、パソコンベースの安価なノンリニア編集になったことで一気にテレビ番組は誰でも作れる物になりました。


裏話。解説の松田さんはシリーズ34回分合計11時間半のフイルムを、のべ4日間、1日7時間ほぼぶっ続けで解説しているのです。時々声がガラガラになって聞き取り難くなるのは多分その日の収録ラスト1時間くらいのところだからです(笑)結構ハードな収録  ↓第一回より
原爆の番組って、その番組1つで完結して感動や何かの答えを探すようなモノが多いです。でも私の「ながさき原爆記録全集」は何の結論もストーリーも感動も何もありません。ナレーションさえありません。ただひたすら情報を詰め込んでいます。番組を見た人がここをきっかけに何かをしなければいけないように作っています。

ただ専門家以外見ることができなかった長崎の原爆カラーフィルムの全部が見れるなんてすごいんです。長崎ケーブルではいまでも順に再放送してます
専門家の方でさえ「え?この瓦礫の映像をえんえんと全部見せるの?」「意味ないんじゃない」「厳選して出した方が」とか、ごもっともな意見を散々もらいました(笑)。でも全カット(笑)見せることに意味があると信じてやってきました。

「ながさき原爆記録全集」はただフイルムを見せている訳ではありません。紹介したほとんどのカットに解説を入れてます。念のため。しかもこんな解説してるので作業量膨大で30分番組が月に一回程度しか放送できない。一人で作ってるので毎週は無理・・・


戦後のカラーの田舎の風景は「この世界の片隅に」などアニメで再現するほかありませんが実は長崎は、なんとカラーで田舎の生活風景が残っているのです。日本が残している当時の記録は全て白黒。でも原爆を落としたアメリカ軍が膨大な予算をかけてカラーで残したのです。皮肉なことです。
↓川で洗濯をする田舎の風景
なんか勘違いしている人がいたのでひとこと。ここで紹介している原爆カラーフィルムは白黒の着色ではありません。72年前に(日本にはほとんどなかった又は高価過ぎて使えなかった)カラーフィルムでアメリカ側が撮影したものです。念のため

「ながさき原爆記録全集」はいろいろ受賞していますが意外と地元の人にとっては当たり前のことを描いています。でもギャラクシー賞の全国審査ではとても新しいことに見えて受賞した、という部分があります。いかに今まで長崎の地元の原爆情報が全国的には伝わっていなかったか、ということ。

例えば昨年平和の誓いの谷口稜曄さんや今年平和の誓いの深堀好敏さんもこの番組に登場しますがそのような被爆体験談は長崎市では(数が減ったとはいえ)珍しいものではありません。もっともっと悲惨な体験をされている方はまだ大勢いるのです。しかし全国的には全然知られていないのです。
※第17回、総集編でたいへんお世話になりました谷口稜曄(すみてる)さんがお亡くなりになりました。お悔やみ申し上げます.

微力ながら被爆50年のとき地上波バラエティ番組であるドォーモで月に1回23分位の尺で3年間長崎原爆企画を続けました。シリーズで原爆企画を地上波で続けるのは決して不可能ではないのです。

そもそも私はドキュメンタリー畑のD(ディレクター)ではありません。20年位ドォーモをやってたベタベタのバラエティ専門Dです笑。今までに900本近くのコーナーを作りました。おそらくその面白い番組を作るという発想が今のながさき原爆記録全集に生きてるのでしょう。

この番組のスタジオトークの雰囲気が和やかで驚いた方もいました。通常原爆番組だとスタジオで笑顔が出ることはまずありません。しかしこの番組では面白いと思えば遠慮なく笑うようにお願いしています。無理に表情を作らず、自然でいれば視聴者と繋がると思っています。
たとえば下の映像。手に持っている絵がカメラ(撮影者)に見えるように不自然なポーズをとっています。典型的ヤラセ映像です。実は、こういうちょっと笑ってしまうような映像が戦略爆撃調査団フィルムは満載なのです。この映像をみて気持ちを押し殺して真面目に語るよりも、笑ったあとでこのプロパガンダ映像をきちんと語った方が私は人間として自然だと思っています。

第八回の映像には沢山のアメリカ兵の行進シーンが登場します。当時の長崎市は人口24万人、死傷者14万人以上。そこに2万5000人のアメリカ兵がいきなり上陸しているのです。当時の人にとって恐ろしい映像です(9月23日上陸 撮影開始日)

当時の長崎市長も映る降伏調印の映像もあります
20年前にほぼ同じことをドォーモでやってたのですが、当時フイルムの場所を確認するのは現場に行く以外手段がなかったのですが、いまはGoogle Earthなどで手軽にどこにいても比較検証することができるようになりました。いい時代ですホント。(だからいまは誰でも検証できるんです!)
下の映像はここと完全に同じ場所です。


今月末の放送で現存する長崎の原爆カラーフィルム「海兵隊フイルム」「戦略爆撃調査団フイルム」合計11時間半の全カットを紹介おわります。専門家のものでしかなかった原爆フイルムが今からは手軽に全て見ることができるようになったのです。

この番組58分間ナレーションは一切ありませんシリーズ全部ナレありません。一般にドキュメンタリー番組では最後にナレーションで美辞麗句を並べるのが常です。私はそれが嫌いです。説明は最小限のテロップ。初めから最後まで全て取材した音声だけでストーリーをつくります

初めからナレーションを使わないという前提で取材をしているので取材はとても神経をつかいます。しかも私ディレクターの質問を全て切るという編集方針なのでなおさら相手の言葉だけで意味が通じるように話して貰わないといけません。取材現場では結構苦労してるのです(笑)

番組では被爆者がさも自分からどんどん被爆体験を話しているように見えますが、実際は私ディレクターと会話しながら被爆体験を話しています。あとで私ディレクターの話を切って相手の話部分だけで話が成立するように気をつけて質問や会話をすすめます。意外と大変なんです。
長崎のケーブルテレビの番組ですが、地上波NBC長崎放送でも一部だけ放送されたこの番組、なんと全国のケーブル4Kで4Kにアップコンして放送しています。私はまだ見てない、見たいー

そもそもこの番組をはじめたきっかけは20年前に長崎原爆カラーフイルムが発見されたことは大きく報道されたけど結局NHKと地元局が数本ドキュメンタリー作っただけで、あとは資料映像としてほぼ死蔵に近い状態だったからなのです

おそらくNHKのドキュメンタリー番組の中で使われるのは山のような戦後記録映像のなかのほんの数パーセント。NHKのドキュメンタリーは素晴らしいけど番組が良くできすぎて見終わるとそれで満足してしまう。あらためて気がつくのはフイルムを見せているようで意外と見せていないのです。編集マジック!

制作者として悩むところはフイルムを沢山見せようとするとドキュメンタリーとして、いやテレビ番組として、全然成立しないということ。
いまからは違う形でTV放送を考える時代かなーとも思います。
私の目標は原爆の日ではない普通の日にみんなが観てくれる原爆番組です。なのでいま再生回数ふえるのはとても嬉しいです。放送するのに何か理由付け(原爆の日とか、終戦とか)がないとできないのはとても嫌なのですです。

NHKでノーナレーションドキュメンタリーとかわざわざタイトルに出してるけど、私が過去に作ったギャラクシー賞関連の三本(※「コンバット満の見えない生活」2006年テレビ部門奨励賞と「ながさき原爆記録全集」2本)はみんなナレーションなしなんだけどなー。(笑)

8月27日の第34回までで長崎原爆カラーフィルム(海兵隊フイルム+戦略爆撃調査団フイルム)合計11時間半合計2485カット全てを放送完了。今も繰り返しケーブルで再放送してるのでいつでも全部見ることができます
噂では長崎で放送される地元原爆ドキュメンタリーはみんな視聴率は悪いと。もちろんそれでも放送する意義は必ずあるのですが、なんとなく分かるのはどんなにいい番組でも「あーまたこれか」的な見え方がすること。この番組では私は全く違う見え方になるよう作ってみました

普通原爆ドキュメンタリーは原爆の悲劇=感動を並べます。しかシリーズ1〜15はほとんど悲劇を伝えません(16以降は違いますがw)。ただひたすらフイルムの場所を特定する番組です

この番組は起承転結がありません。毎回最後に「宇宙戦艦ヤマト」よろしく「全紹介まであとXX%」で終わります(笑)。ひたすら「ここが松山町のセブンイレブン」とか「浜の町の好文堂書店」とか地元民しかわからない言葉だけで説明します。語弊がありますが楽しい番組なんです
この番組は昔のフイルムを解析しているだけなんです。反響では中学生でハマっている人がいるそうで番組で解析できないところを自分で特定しているんだそうです(すごっ)。悲劇を伝えることは他人事なのでとても難しいです。今回は全く違う方向から悲劇を伝えようと思いました

この番組は長崎市民だけしかわからんじゃないか」と言う人が殆どです。「だから地上波向きじゃないしケーブルTVだけだね」とよく言われます。でもよく考えて下さい。ゴールデンタイムのテレビ番組でも一度も行ったことがない東京の地名を出しまくり、あまつさえ行けもしない店の紹介を堂々と全国放送で毎日のようにやってるのです。だからこの原爆検証番組は全国で通用するんです。